透析Q&A|沼津市の透析クリニック

透析Q&A

透析についてよくあるご質問

透析療法が導入されてどれくらい生存できるのでしょうか?
透析療法をうけていない一般住民では性、年齢ごとの平均余命が公表されています。
同じ方法で慢性透析患者さんで計算すると、男女ともに平均余命が一般住民に比し40歳台で約20年、60歳台で10年短くなっています。80歳台では殆ど差異がなくなります。
年齢、透析導入前の合併症の有無、糖尿病の頻度等を考慮する必要がありますが、わが国の透析患者の生存率は世界的にみて最も良好です。
透析時間はなぜ週3回、一回4時間必要なのでしょうか?
健康な人の腎臓は一分、一秒の休みなく働き、一分間に約1mlの尿を作っています。
全く腎機能の廃絶した人に週3回、一回4時間の血液透析を施行するとします。
一週間(24時間x7日=168時間)あたり4時間X3回=12時間の透析で12/168=0.071、約7%の腎機能を代行できます。
この程度の腎機能があれば日常生活には支障なく仕事や生活が可能です。
透析回数や時間を延長すれば、もっと腎機能の代行が可能ですが、それだけ自分の自由になる時間が短縮することや、スタッフの問題がでてきます。
解決策として家庭透析や短時間頻回透析もあります。
ドライウエイトはどのように決めるのでしょうか?
透析前に浮腫がなく、透析終了時に血圧が低下する時点での体重がドライウエイト(DW)と呼ばれています。
血液透析療法が開始された頃は、若くて他に合併症を有さない患者さんが中心でした。
しかし、高齢者や動脈硬化症を有する患者さんでは、測定時に達する前に血圧が低下することが珍しくありません。
このような患者さんでは、透析前の胸部X線写真での心胸比(CTR)、エコ-による下大静脈径や血液検査所見(アルブミン、ANP,BNP等)を参考にしてDWを決定しています。
DWは食事内容、栄養状態等によって刻々変化します。
シャント(ブラッドアクセス)はなぜ必要なのでしょうか?
健康なヒトの腎臓は左右一対あり、腎動脈から血液が入り、血液を濾過したのち、腎静脈から血液が心臓へもどります。血液透析では、この腎動・静脈に相当するのがシャント(ブラッドアクセス)といわれるものです。
血流量は最低でも一分間に200mlは必要です。内シャント(動静脈ろう)は前腕の動脈と静脈を手術的に吻合し、充分静脈が拡張した頃に使用を開始します。
静脈が細い人には人工血管(PTFE、ポリウレタン)を用いることもあります。
内シャントと人工血管はどちらが優れているのですか?
機能的には内シャントの方が優れていますが、静脈が細い等の理由で内シャントが使用できない場合は、 人工血管が使用されます。
腎移植への待機時間が比較的短い米国では、てっとりばやい人工血管を選択することが多く、逆にわが国では殆どが内シャントとなっています。
透析患者に危険な健康食品・医薬部外品はなんでしょうか?
塩分やカリウム含量 の多い食品、飲料が危険であることはいうまでもありません。
しかも、内容量をはっきり記載してないものが少なくありません。
また、脂溶性ビタミン類、ビタミンCは過剰摂取にならないようにします。
バイアグラは使用してもいいのでしょうか?
透析患者であるから使用してはいけないということはありません。
しかし、透析患者でない方々と同様に、心臓に問題のあるヒトは使用できません。
透析中に血圧が低下するのはなぜでしょうか?
血圧の調節には種々の因子が関与していますが、血圧低下の第一の原因は過剰(量 またはスピ-ド)除水です。
体重増加が+5%以上では、どうしても除水量を多く設定する必要があります。
引くから増えるのか、増えるから引くのか、原因と結果をよく見極める必要があります。
透析開始直後や前半に血圧低下する場合は、除水よりも心・血管系や交感神経系に問題があります。
透析中に足がつる(ケイレンする)のはなぜでしょうか?

筋痙攣は血液透析中によくみられる症状ですが、詳細な病因は不明です。
しかし、主な原因は次の三つと推定されます。

  • 低血圧
  • 設定された基準体重が低すぎる
  • 透析液ナトリウム濃度が低い

この他にも、血清カルシウム低値・血清マグネシウム低値・薬剤の影響・不均衡症候群の一つ の症状として、等が報告されております。原因として頻度の高いものについて、概説いたしましょう。

低血圧

透析中の血圧低下と共に、よく観察されます。低血圧により筋肉への血行が低下して、筋肉の 痙攣が誘発されるものと考えられます。時には全身血圧が下がらなくても、筋痙攣が発生します。
これは恐らく、累計の除水量が増えてくるにつれて臓器・組織の血流量が減少する事実から、筋肉でもこうした状況が生じているのでしょう。

血清カルシウムの低下

低カルシウム透析液の血液透析の時に生じます。この状態では、筋線維が極めて不安定な状態 にあるため痙攣を生じやすいのです。

基準体重の設定不適

基準体重の設定は必ずしも容易ではなく、しかも、栄養状態により時間経過と共に変化するも のと考えられます。基準体重が低すぎて設定されると、血液透析の広範に、相当に強い筋痙攣 が生じます。低血圧のほか、脱水が関係しているものと推定されます。

透析液のナトリウム濃度

組織のナトリウム濃度が低すぎると、筋肉組織内の血管が収縮する(縮む)ことが知られています。

対策
  • 基準体重の見直し。透析間体重増加を5%以下に心掛ける。
  • 低血圧対策(昇圧剤や補液=生食または5%糖液など)
  • 高ナトリウム液(10%)または高張グルコース液(50%)またはカルチコールそれ ぞれ20ccの血液回路からの注射。
  • 痙攣部筋肉にホットパックを貼付する。できれば痙攣部を軽く動かす。
  • 耐え難い痛みを伴う場合には、浸透圧物質のグリセオール200~500ccを血液回 路から急速注入し、これで痛みが良くならなければ透析を中止する。
  • 透析時間・血流量・透析液ナトリウム濃度などを再検討してもらう。
  • カルニチン、マイナー・トランキライザーの透析前内服の有効例も経験しています。
予防策

私共の経験では、透析中の低血圧を予防すれば、大半の筋痙攣を防止できるようです。もし、発生しても昇圧を直ちに行なえば、大事には至りません。
是非、担当医とよく話し合われ、早く快適な透析が持てるように祈ります。

シャントの穿刺針にはどのようなタイプがありますか?
血管を穿刺する針自体はどのタイプでも金属でできています。
血管内留置針は金属(人工臓器用穿刺針、AVフィスチュラ)とカニュ-ラ(テフロンやポリプロピレン製)とがあります。
すこしくらい動いても抜けたり、血液がにじんできたりしないような柔軟性があり、生体適合性の良い穿刺針が選ばれています。針の消毒法によっては穿刺部位にかゆみを生じることがあります。
心胸比(CTR)について教えてください。
透析前に立位で深吸気時の心臓の最大径を胸郭部(右側の心臓と横隔膜が接する部位で測定)の比を計算して求めます。
50%以下が正常と考えられています。立位、深吸気ができない人では正確に測定できません。CTRは体内の水分量(血管内容量)を示す一つの指標と思われています。
体重やDWとともに定期的(2-3ヵ月に一度)はチェックする必要があります。
透析膜(ダイアライザ-)について教えてください。
透析器の中でもっとも重要な部分です。
血液中から水分、および種々の溶質、毒物(尿素窒素、尿酸、クレアチニン、カリウム、ナトリウム等)を濾過する膜です。
膜の素材によって水、溶質の抜けるスピ-ド、種類(分子量や形によって異なる)が少しずつ異なります。大別するとセルロ-ス系膜と合成高分子系膜に分かれます。
主に患者さんの体格、食事量、デ-タ(BUN,血清クレアチニン)によって選択されます。
透析膜によって消毒法の違い(ガンマ-線、EOガス、高圧蒸気滅菌)があります。
血液透析を開始してからしばらくたちますが、担当医からCAPDへの変更を勧められました。変更することでの効果はあるのでしょうか?
腎臓の機能を代行するという点では、常時透析を行っているCAPDの方が、血液透析よりも人の腎臓に近いと言えます。
ただし、時間当たりの効率は血液透析の方がよいのです。
しかし、血液透析は1週間に12時間だけしか働きませんので、急激に身体の中の状態を正常化し、また悪くなってからきれいにするという繰り返しです。CAPDは常時行っているので、急激な変化はありません。
医学的には、もし尿量が1日に400ml以上あるならば、CAPDは絶対におすすめです。尿量を保つためにはCAPDの方が有利だからです。食事療法、塩分、水分、リンの管理は血液透析と同様ですが、カリウムのみは血液透析よりも多くとることが出来ます。
CAPDを行う場合、自分で行うという強い意志が必要です。この意志の強さは、CAPDで成功するための絶対的条件です。
CAPDをしていますが、働くことになりました。職場では液の交換が出来ませんが、どうしたらいいでしょう?
家を出るときにバック交換を行い、帰宅後すぐに行い、3時間程度の透析液をお腹にため、寝る前にもう一度交換します。
要は多少の時間的ズレがあっても、1日4回の バック交換が出来ればよいのです。
しかし、日曜日など時間があるときには、出来るだけ規則的に行うのがよいと思います。
もし、生理の時に血液が透析液に混ざるような時には、帰宅後続けて2回程度停滞をおかずにバック交換を行って下さい。
血液透析をしていましたが、どのシャントも潰れてしまい、たいへん苦労しています。毎回の穿刺が苦痛でたまりません。人工血管をうえて欲しいと思うのですが、人工血管について教えてください。
人工血管は血液透析のブラッドアクセスとして、近年多く使用されるようになってきております。糖尿病性腎症の増加や長期化に伴い、自己血管の荒廃した患者さんが増加しているからです。穿刺は非常にスムースなのですが、いくつかの欠点もあると思います。
まず、手術の際は自己血管のシャントよりも、術後の腫脹が長く続く場 合が多いです。
次に穿刺開始時期ですが、自己血管の場合、手術後1週間程度から使用開始となりますが、人工血管の場合は2週間ぐらいしてからの穿刺となる場合が多いです。しかし、最近、腫脹が少ない人工血管やコーティングした人工血管がでておりますので、このあたりはさほど重要でないかもしれません。

最も重要なのが血管の保ち具合です。
自己血管の場合、開存期間は平均ですが1年で80~90%、3年で80~70%、5年で70~60%、10年で50%程度持ちますが、人工血管の場合は3ヶ月で60~70%、6ヶ月で60~50%、1年で30~40%です。
ただし、人工血管をしっかりと管理する(透析治療中に静脈圧をモニターし、狭窄が疑えたら、血管造影の後血栓を除去したり血管を広げたりする)ことで上記の保ちが3ヶ月で80~90%、6ヶ月で70~80%、1年で60~70%程度にアップします。
さらに、血液が固まらないようにするお薬を内服することで血栓の予防になると思います。
このような欠点はあると思うのですが、しっかりと管理をすれば患者さんの穿刺の苦痛はなくなると思います。人工血管の材質はPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やポリウレタン等が主流になっています。
特にどちらがいいというのはないのですが、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)が昔からあり、比較的安定した成績を出していると思います。

腹膜透析において、従来のCAPDでは腹部カテーテルの定着に約1ヶ月の入院を要するが、SMAP療法(段階的腹膜透析導入法)はカテーテルの挿入に際して3~4日の入院で済むと聞きました。どの様に違うのでしょうか?

従来のカテーテル挿入手術では、患者さんの血清クレアチニンレベルが8~9mg/dlになった時点でカテーテル挿入手術を行います。創傷の治癒を待つとともに、バッグ交換操作を学ぶため3~4週の入院期間が必要です。
入院期間が長くなるのは、バッグ交換のトレーニングのためです。
SMAP法では、患者さんに余裕のある保存期のうちに2泊3日程度の入院でカテーテル挿入手術のみを行います。
バッグ交換操作は外来で習得する方法をとるため、入院期間が短くなります。
腹膜透析は尿毒症症状が現れた時点で開始します。従来のカテーテル挿入手術でもSMAP法でも、カテーテル挿入術時のカテーテルの定着(傷の治り)には差はありません。

川島病院 水口 潤先生より

血液透析をしている男子ですが、生殖能力が妨げられることがあるでしょうか?

詳しい原因はよくわかっていませんが、慢性腎不全という状態(維持透析)によって、精巣の機能が低下する場合があります。精巣の機能低下によって、精子形成が障害されますし、男性ホルモンのレベルが低下することによって性欲の減退、勃起力の低下がみられます。
精子形成能と勃起力はパラレルに推移することが多いように思いますが、一方のみが影響を受ける場合もあると思います。このような慢性腎不全が原因である場合には、腎臓移植によって精巣機能が改善することがあります。
そのような可能性がある場合は男性不妊外来を受診してみてください。

大阪市立大学泌尿器科 杉村 一誠先生より

内視鏡下で行う二次性副甲状腺機能亢進症の副甲状腺摘出術(PTX)について教えてください。

甲状腺、上皮小体の内視鏡下手術は世界的に行われてきましたが、欧米では下火になってきたと認識しています。
上皮小体は原発性HPTが鏡視下手術の適応となりますが、侵襲も小さくならないため、部位診断を確実にし、MIBIナビゲーターを使用したりして、局麻下小切開で直視下に腺腫のみ切除する施設が世界的に増えつつあります。
術中PTHassay、または術翌日のPTH値checkにて残存病的上皮小体の有無を確認する方法です。gold standardは両側頚部開創、全ての腺を肉眼的に確認という術式です。われわれはまだこの方針で行っています。
二次性HPTは全ての腺が腫大しており、しかも胸腺を切除することが基本術式のため、鏡視下手術は適さないと私は考えています。現在当院では約6cmの切開で、頚部手術は1時間かかりません。侵襲から考えても直視下の方が良いと考えています。
ただし頚に傷跡が残ることがあるのですが、ほとんどの方は傷は目立ちません。腎不全の方は健常者に比してケロイドになりにくい印象を持っております。
わが国では帝京大学の高見教授groupが2HPTに対しても鏡視下でPTXを施行しています。

名古屋第二赤十字病院 腎臓病総合医療センター 外科 冨永 芳博先生より

腎臓病患者に対するインフルエンザワクチンの安全性、および効果について教えてください。

移植患者へのインフルエンザワクチンの安全性は確立されていますが、効果については多少議論があるようです。
UpToDateではこれを推奨しています(Clin Transplant 1996 Dec;10(6 Pt 1):556-60)。一方塩酸アマンタジンは腎障害患者には十分注意して投与すべきとされています。
また透析患者での抗体産生は低下していることが考えられますが、実際の効果は一般とあまり変わりないということで投与が推奨されます(Semin Dial 2000 Mar-Apr;13(2):101-7) ネフローゼ症候群、IgA腎症、SLEなど対しステロイドなど免疫抑制療法を施行中の患者様にも推奨されています。
なお、タマゴや他の薬剤にアレルギーの経験がある方は避けたほうが良いです(花粉症は関係ありません)

秀和綜合病院 腎臓内科 塚本 雄介先生より

慢性腎臓病とはなんでしょうか?
慢性腎臓病は、糖尿病や高血圧による腎臓障害、IgA(アイジーエイ)腎症などの慢性糸球体腎炎、多発性嚢胞腎など沢山の原因による慢性に経過する腎臓病の総称で、2002年に米国で提唱され、現在は世界的な用語になっています。
腎臓の働き(糸球体濾過値)が60%未満に低下すると、心筋梗塞などの心臓病になって死亡する危険性が増します。糖尿病や高血圧、肥満、高脂血症などのメタボリックシンドロームは心臓病を引き起こす重要な原因となりますが、これらにより腎臓が侵され慢性腎臓病になると飛躍的にその危険性が高まります。
慢性腎臓病が進行し腎不全となり、透析療法をしなければならなくなる原因の第1位は糖尿病、第2位はIgA(アイジーエイ)腎症などの慢性糸球体腎炎です。年間3万6千人があらたに透析療法を日本では開始しています。
慢性腎臓病は高血圧の原因となります。
血圧が130/80以上の方は、先の2つの簡単な検査を定期的にうけて、早期発見に努めましょう。
糖尿病が進行すると慢性腎臓病になります。
尿中アルブミン濃度が30 mg/gを超えたらその兆候です。腎臓専門医にも受診してください。